「カジノ」のめりこむ心、どう制御…シンガポールの悩み

人事ニュース

 

日本にカジノがやってくる…。

そんな話題が、最近ではよく上がるようになりましたよね。

東京や大坂、さらには沖縄など、色々な自治体が誘致をしようとしているようです。

 

カジノ誘致にあたり、一番のメリットは外貨の獲得ではないでしょうか。

観光収入として、大きな期待ができます。

 

カジノがある事で有名なシンガポール。

カジノを含む巨大施設が2010年に開業。

2013年の観光収入は、1兆9千億円にものぼると言われています。

 

しかし、メリットがある一方で、デメリットも大きいのがカジノだと思います。

シンガポールでも、様々な事が問題視されているようです。

一言で言えば、「ギャンブル依存症」の危険性が増す…と言う事ですね。

 

 ※7月10日 日本経済新聞 のめり込む心、どう制御、シンガポールの悩み

 

そもそも、ギャンブル市場をご存知の方はどれぐらいいるでしょうか。

結論から言えば、日本は「世界最大のギャンブル大国」だという事です。

 

◇日本国におけるギャンブリングマーケット

 パチンコ・パチスロ … 18兆8,960億円

 中央競馬 … 2兆2,940億円

 宝くじ … 1兆40億円

 競艇 … 8,630億円

 競輪 … 5,930億円

 地方競馬 … 3,250億円

 オートレース … 810億円

  計:24兆0560億円  ※ レジャー白書2012版より

 

なお、ラスベガスは約5,000億円。

米国のカジノ売上上位20位を全て足しても、年間2兆6,000億円ほど。

マカオですら、年間売上2兆6,000億円だそうです。

 

いかに日本がギャンブル大国であるか、お分かり頂けると思います。

 

パチンコ・パチスロ市場がこれだけ大きいという事は、日本にとってギャンブルと言うのは、非常に身近であるものと言う事です。

お金持ちやセレブの娯楽ではなく、一般人にも浸透している。

それゆえの、ギャンブル大国なのではないでしょうか。

少し大げさに言えば、日本人はギャンブルにはまりやすいDNAを持っている…と言えるのかもしれません。

 

シンガポールカジノを覗くと、色々と対策をしていることが分かります。

 

 ・国民には、100シンガポールドル(8,000円程度)の入場料を課す

 ・ギャンブル依存者本人や家族が、入場禁止措置を新生できる制度を導入

 ・昨年6月に、低所得者などの入場回数の規制を設ける

 

など、「ギャンブル依存」に関してはかなり神経を尖らせています。

 

ギャンブル依存症と聞くと、自分には関係ないと思いがちです。

しかし、これは誰しもがかかる「病気」であり、裕福か貧乏か等は関係ありません。

パブロフの犬に代表される、条件反射に近いものなのです。

 

ドーパミン、アドレナリン、セロトニン、エンドルフィンなどが関係していると言います。

ギャンブル依存症は、薬物依存症などとメカニズムは同じ。

ギャンブルで興奮状態・安堵感を覚えるか、薬物でその状態になるのか。

やめたくても中々辞められない…それが薬物依存であり、ギャンブル依存です。

 

カジノにおけるギャンブル依存症では、有名な話があります。

 

カジノにはまり、ギャンブル依存症になってしまい、会社のお金を持ち出してしまった。

その結果、特別背任の容疑で逮捕されてしまう。

 

大王製紙株式会社の元会長、井川意高氏の話は記憶に新しいです。

カジノへの利用目的で、子会社から個人的にお金を借り入れていたのです。

総額、106億円と言われています。

 

この詳細は、井川会長ご自身の著書に、事細かに載っています。

 

※「溶ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」

 

井川氏は、東京大学法学部卒業。

42歳で大王製紙の第6代目社長に就任されました。

いわば、エリートです。

 

お金もある、地位もある、名誉もある。

ギャンブルなんかしなくとも、お金は有り余るほどあったはずです。

実際、今回の106億円の負債も、個人の株式を売却して返済したくらいです。

 

 実力で上場企業の社長に就任された方ですから、当然精神力は並外れたものがあるでしょう。

人1倍根性もあるでしょうし、仕事にも実直に取り組まれていたようでした。

そんな井川氏ですら、カジノ(ギャンブル)にのめり込んでしまったのです。

 

それこそ、かなり精神力が強いであろうオバマ大統領ですら、タバコを吸っていたくらいです。

タバコも依存症の一種ですよね。

セレブだろうが一般だろうが、精神力が強かろうが弱かろうが、依存症と言うのは全ての人に関わりがあるものです。

 

ギャンブル依存は、薬物依存と同じで、意志の強さは関係ありません。

本能とも言える部分が刺激される。

よく言われることですが、ギャンブル依存の前には、自分の意志など無力なのです。

病気なのですから。

 

風邪をひきたくなくとも、風邪はひく。

アレルギー反応を出したくないと思っても、アレルギー物質に触れると症状が出てしまう。

似たようなものです。

 

「カジノ」と聞くとオシャレに聞こえますが、結局はギャンブルです。

本質的には、パチンコやパチスロや競馬と、なんら変わりありません。

 

日本にカジノが進出するというのは、やはり依存症への心配事が拭えません。

 

ギャンブル依存と言うのは、様々なものを失う可能性があるからです。

仕事にも身が入らなくなり、職場やお客様に迷惑をかけます。

家族にも迷惑をかけます。

友人にも迷惑をかけます。

ギャンブル依存になってしまうと、周りが見えなくなってしまうのです。

 

手をつけてはいけないはずのお金に手を出してしまう。

友人の約束を断り、賭場へ行く事を優先する為に、友人がどんどん減っていく。

ギャンブルで負けたお金を取り返す為に借金をし、負け、そしてまた借金をする。

勤務中であるにもかかわらず、営業の合間に賭場へ行く。

こうした事は、ギャンブル依存症の方に起こっている事実なのです。

 

ストレス発散の為にギャンブルをする…という方もいるようですが、実際は発散になっていません。

ギャンブルをしている最中は元気だが、終わった後には疲労感たっぷり…。

それは、上記の脳内分泌が影響している為です。

 

実際はリラックスできていないのに、リラックスしているという「状態」にさせられる。

だから、錯覚してしまうのですよね。

 

負けたときは嫌悪感を覚え、自分を責めたりもします。

本来であれば、読書や散歩、スポーツや家族・友人と過ごしてストレスを発散すべきところを、ギャンブルで発散しようとしてしまう。

それが、怖いところです。

 

タバコを同じで、最初は気軽な感じで始めたものが、いつの間にかやめられなくなる。

ギャンブルも同じで、気軽な感じで始めた人が、いつの間にかどっぷりと浸かってしまう。

カジノも気軽に始めてしまうと、やめられなくなるかも知れません。

 

当然、政府は依存症の事に関して、声を大にして言う事はないでしょう。

パチンコ・パチスロ業界がこれだけ巨大化し、世界最大のギャンブル大国になっている日本です。

カジノの観光収入も、国の財政の為に大きく期待している部分だと思います。

 

外貨を稼ぐ事ができる一方で、私たちはのめり込まないように意識せねばなりません。

 

一番良いのは、行かない事やらない事。

一度ハマってしまうと、中々抜け出せなくなります。

上記にもあるとおり、タバコ・アルコール等と同じですね。

 

メリットは当然あります。

しかし、デメリットも大きい。

その点を、しっかりと認識すべきだと思います。

周囲が良いと言っているから良いではありません。

最終的には、自己判断だと思います。

 

私個人の意見を申すならば、やらない事が一番だと思います。

自分の生活を犠牲にしてまで、観光収入だ、国の財政だと言う必要はありません。

 

人事関連の仕事をする者としても、決して軽視できるものではありません。

クライアントの従業員が、依存症になるかもしれない。

そのせいで生産性が落ち、業績が悪化してしまうかもしれない。

 

それこそ、もっと身近な家族や友人が依存症になるかもしれない。

カジノの行く末は、非常に注目しているところです。

 

 

 

 

 

尾登 正幸

ブログ著者:尾登 正幸

埼玉県出身。大学3年生の就職活動期に “人生を楽しむことを手伝える” 仕事での起業を決意。同じ志を持つ仲間と3年後の会社設立を目標として共有し、ノウハウを得るため2006年に人材派遣会社に就職した。2008年12月、仲間と共にRAYERED(株)を設立し、2010年からは代表取締役に就任。ビジョンの共有を核とする人事コンサルティングや、人事適性検査にフィードバックを付けるサービスはリピーターが多い。人事適性検査をフル活用した独自のスキームにより、企業と人のベスト・マッチングを提供している。

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