改正労働者派遣法と改正労働契約法の影響、遠のく正社員への道
12月1日 日本経済新聞からの抜粋+一部編集です。
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派遣揺れる現場、改正法施行2ヵ月(下)遠のく正社員への道、登用推進、業界ジレンマ
2010年2月に民主党政権が打ち出した「専門26業務派遣適正化プラン」。
リーマン・ショック後に頻発した「派遣切り」批判などを背景にした同プランで政府は、派遣業務が政令で定めた区分通りに運用されているかを厳しく調べ上げた。
◇求人は再び増加
「パソコン操作に派遣されたスタッフの来客、電話対応は違法」
「受け付けとして派遣された人の商談中のお茶だしは違法」……。
だが、職場の実態とはかけ離れた指導強化で企業の現場は大混乱し
「派遣はリスク」
と多くの企業が人材派遣からパートや契約社員へのシフトを進めた。
総務省の「労働力調査」では12年7~9月の派遣社員数は87万人と10年の同じ時期から16%減っている。
だがそれも一時的な動きにとどまりそうだ。
企業のパート、契約社員シフトを止めつつある理由が来年4月に施行される「改正労働契約法」。
「日雇い派遣」を禁止した改正労働者派遣法とならび非正規社員の扱いに大きな影響を及ぼす。
改正労働契約法では同じ職場で5年を超えて働くパートや契約社員が希望した場合、企業は無期雇用にする義務を負う。
スタッフサービス・ホールディングスの岡登志雄社長は
「企業は改正労働契約法を見越して人材派遣に戻ってきた」
と語る。
同社の事務系派遣求人は、改正労働契約法が成立した8月には前年同月比で24%増になった。
もっとも派遣社員需要の好転を歓迎する一方で、派遣業界には危機感も根強く残る。
需要が戻るだけでは派遣社員の身分の安定にはつながらないからだ。
状況が変われば再び「派遣切り」が起こる恐れもある。
◇評価制度導入へ
10月1日、人材4業種(人材派遣、製造業派遣、人材紹介、求人広告)は東京都内のホテルに産・学・官の関係者100人以上を集め、一般社団法人「人材サービス産業協議会」の設立式典を開いた。
設立の目的の1つが派遣就労を通じたキャリア形成の支援だ。
マンパワーグループ(横浜市)の池田匡弥副社長は
「派遣社員の半数は正社員への登用を望んでいる」
と指摘。
人材派遣が、正社員を目指す非正規社員などのキャリアアップの「踏み石」となることを目標に掲げる。
これまで派遣社員は派遣先が変わるたびにキャリアが途絶え、同じ仕事の正社員と比べて待遇面の差が大きかった。
そこで派遣社員の働きぶりを正しく評価する仕組みを作り、業界全体で派遣社員のキャリア履歴を管理する。
次の就業機会の提供や昇給機会を確保し、優秀な非正規社員の正社員登用につなげるのが目的。
13年後半にも制度の運用を始めたい考えだ。
ただ、業界の足並みはなかなかそろわない。
正社員への登用推進は派遣会社の「商品」である派遣スタッフを失うことを意味する。
また派遣社員の評価や派遣先企業とマッチングは各社独自のノウハウがあり、どこまで他社と協力できるか不透明だ。
10月開始予定だった、正社員などへのキャリアアップに成功した派遣社員への共同調査はすでに遅れが生じている。
11年現在で全雇用者数に占める非正規社員の割合は35・2%と過去最高になった。
リクルートワークス研究所によると、20年に25~34歳男女の正社員数は663万人と、10年比で199万人減少する。
派遣を巡る一連の法改正が、若年層を中心に増える非正規雇用者の待遇改善につながらないとすれば、法改正の意義が問われることになる。
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政権交代により、「派遣労働者」に対しての印象も変わりそうですよね。
私は、起業するまで派遣業に携わっていたので、感じる事があります。
それは、
「派遣会社にとって、派遣スタッフが正社員になる事はできるだけ避けたい」
というものです。
これは、正直今でも同じなのではないかという事です。
記事にもある通り、派遣会社にとっては派遣スタッフはいわば「商品」。
派遣してこそ売上が立つので、その派遣スタッフを正社員登用されてしまうと、痛手なわけです。
だからこそ、派遣会社の社員は、
【正社員になるのではなく、派遣スタッフでい続ける事を勧める】
のです。
正社員登用時にその分のフィーを企業から貰っていてもです。
それよりも、継続的に入ってくる方が良いからです。
もっとも、あくまでも数年前の私の感覚。
今は派遣業はやっていないので正確には分かりませんが、今でも同じような感覚がまかり通っているのではないでしょうか。